Mission
Society 5.0は日本が提唱する未来社会のコンセプトです。このSociety 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、人工知能(AI)により今までにない新たな価値を生み出すことで、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、一人一人が快適で活躍できる社会となります。
このSociety 5.0で実現する医療は、Internet of Medical Things(IoMT)により全てのヒトとモノが繋がることによるデータ連携や遠隔診療により、これまでの施設中心型の施設医療から患者中心かつ日常生活圏で予見的・生涯的な医療ケアへとパラダイムシフトが起こります。なかでも、スマートフォンやウェアラブルなどを利用したモバイルヘルスは、患者・市民の日常生活圏から継続的に健康・ライフスタイルに関するデータの収集が可能となります。そして、そこから生み出されるビッグデータをAIを用いて解析し、個々人にとって価値のある情報に変換することで、P4 Medicine*1,2(予測医療predictive・個別化医療personalized・予防医療preventive・参加型医療participatoryの頭文字)を実現することが可能となります。
このように、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどのモバイルヘルスから収集した個々人の健康・ライフスタイルに関するビッグデータは、P4 Medicineの実現に重要です。そのため、モバイルヘルスから収集したデータの有用性・妥当性を検証することは、デジタル医療の発展において必須であると考えます。
そこで本デジタル医療講座(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社と共同設立)では、モバイルヘルスを用いた観察研究を実施し、モバイルヘルスの有用性と妥当性の検証を行います。具体的には、スマホアプリによる個人の健康やライフスタイルに関連する観察研究を行い、スマホアプリによるデータ収集と、実際の診察による診療情報の収集の妥当性と信頼性を検証します。さらに、モバイルヘルスから収集したビッグデータをAI解析し、疾患発症・重症化リスクや行動変容の促進を行うアルゴリズムの開発ならびにその効果を検証します。発展的には、モバイルヘルスから収集した個々人の健康やライフスタイルに関連した情報とゲノム・オミックス情報を組み合わせ、P4 Medicineのシステムの構築を目指します。また、モバイルヘルスで収集した個別データに情報を医療機関に供与するために、モバイルヘルスの標準化によるインフラの開発を行います。
本講座がSociety5.0時代におけるデジタル医療推進のための基盤構築に資することができれば幸いです。
本講座ロゴに込められた想いはこちら
*1Hood, L. & Friend, S. H. Predictive, personalized, preventive, participatory (P4) cancer medicine. Nat Rev Clin Oncol 8, 184-187, doi:10.1038/nrclinonc.2010.227 (2011).
*2Flores, M., Glusman, G., Brogaard, K., Price, N. D. & Hood, L. P4 medicine: how systems medicine will transform the healthcare sector and society. Per Med 10, 565-576, doi:10.2217/pme.13.57 (2013).
順天堂大学医学部
准教授 猪俣武範